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  − 水生生物の調査方法 −     

 
 このページでは、「カワゲラウオッチング」 など水生生物調査を行う際の計画 ・事前の確認事項 ・道具 ・作業手順の例を紹介します。



水生生物の調査方法
計画 ・事前の確認事項







1 調査時期の選定

  ・川に入っても寒くない時期を選ぶ場合は、夏。
  ・大きめの水生昆虫を観察したい場合は、 秋〜冬。
  ・梅雨や台風など、川の水位の変動が大きい時期は避ける。
  ・雨の後に天候が回復しても、川の増水がまだ続いていることが
   ある。当日の天候が良くても、調査が実施できるとは限らないこ
   とに注意。できるだけ天候が安定している時期を選ぶ。


2 調査場所の選定

  ・必ず事前に下見して、現場の状況を把握しておく。
  ・急流、障害物、深みなど危険な箇所がある川は避ける。
  ・平常時の川の状況だけでなく、増水時の状況も確認しておく。水位
   の変動が大きい川は避ける。

  ・川の水位は、上流のダムや堰などの運用状況によっても変化する。
   調査中に水位の変動が予想される場所は避ける。
  ・漁場として使用されている場所で調査を計画する場合は、漁業協同
   組合に
相談する。
  ・場所の選定の際には、現場の状況だけでなく、往復の行程 (移動
   手段 ・所要時間 ・安全性など) も考慮する。
  ・私有地を通行する場合は、所有者の承諾を得る。



3 複数の地点で水生生物の比較調査を行う場合

  ・比較調査の例 上流域と下流域との比較
             流れがある部分と流れのない部分との比較
             石が多い場所と少ない場所との比較  など
  ・水生生物の生息状況(個体数 ・種類など)は、季節によって変化す
   る。複数の地点で水生生物の生息状況を比較する場合は、調査の
   時期を統一するようにする。
  ・場所や時期の選定については、上記 1・2と同様。


4 定期的に調査を行う場合

  ・定期調査の例  毎月調査を行う
              2ヶ月おきに調査を行う
              季節ごとに調査を行う
              毎年調査を行う  など
  ・水生生物の生息状況(個体数 ・種類など)は、同じ川であっても、
   場所によって変化する。水生生物の生息状況を定期調査する場合
   は、決まった場所で調査するようにする。

  ・場所や時期の選定については、上記 1・2と同様。






6 スタッフの事前打合せ 

  ・事前にスタッフが集まって、安全管理 ・役割分担 ・時間配分 ・作業
   内容 ・道具などを確認しておく。
  ・必ず事前に調査地を下見して、現場の状況を把握しておく。
  ・予備調査を行って水生生物を採集し、主な生物の種類を調べておく
   
(参考資料 : 水生生物の分類のポイント 水生生物アルバム)。
  ・予備調査で見つかった主な水生生物は、種名だけでなく、特徴 (餌
   や生活史など) を図鑑や資料で調べておくとより良い。







水生生物の調査方法
採集や分類に使う道具







 採集や分類作業で使う道具について、下記のように主なものを挙げました。これ以外にも、帽子 ・軍手 ・救急用品などを準備しておく必要があります。



1 筆記用具

  ・鉛筆が良い。芯が折れないようキャップを付けておく。
  ・濡れていると書けないので、ボールペンは避ける


2 タモ網

  ・水生生物を採集するのに使用する。網の下枠が直線になっている
   ものが良い。この形状が河床にフィットしていて、水生生物を採集
   しやすい。
  ・現場は参加者で混み合うので、柄が短いタモ網が良い。




このタモ網のように網の下枠が直線で、
かつ、柄が短いタイプが良い



3 バケツ

  ・拾い上げた石や採集した水生生物を現場で入れる。
  ・子供が容易に持ち運べるサイズのバケツを選ぶ。


4 白いバット ・タッパーなどの容器

  ・水生生物を確認しやすいので、バットの色は白が良い。
  ・バットのほか、タッパーや紙コップなどの容器をいくつか用意する。
   分類作業で、種類ごとに水生生物を分けておくのに使う。


5 歯ブラシ (使い古しのもの)、ピンセット

  ・下の写真のように石にくっついている生物をはがして取るのに使う。



石の表面にくっついているトビケラ (砂粒で巣を作っている)



6 スポイト

  ・分類作業の時、小さい水生生物を取り上げるのに使う。
  ・小さくてすばしこく逃げる生物は、ピンセットでつかむのは難しい。
   
こういう時にスポイドがあると便利。


7 虫めがね

  ・分類作業の時、小さな生物を拡大して観察する。 



7 水温計

  ・気温や水温の計測に使う。


8 簡易流速計 ・ストップウオッチ

  ・川の流れの速さを計測するのに使う。
  ・簡易流速計は、直径 5cm程度のゴム球に 3.5m程度のひもをつな
   いで自作する。
  ・ゴム球がない場合ば、 8分目くらいまで水を入れた小さめのペット
   ボトルで代用する。

  ・ストップウオッチは、簡易流速計のゴム球 (またはペットボトル) の
   流下時間を計るのに使う。






水生生物の調査方法
採集の手順







1 採集場所に入るときの注意

  ・採集は、川下から川上へ向かって行う。
  ・カゲロウなどは、人影を察知すると水流に乗ってすぐ逃げる。上流側
   から川に入ると、カゲロウなどが下流に流れ去ってしまうので注意。


2 どんな場所で採集するか

  ・水生生物は、石の表面や裏側にくっついていることが多い。
  ・石(こぶしより少し大きいもの)の下流側にタモ網を構えておき、石を
   静かに取り上げてバケツに入れる。
  ・適度な大きさの石がない場所では、この作業は省略する。





3 石を取り上げた後の作業

  ・石を取り上げた場所の小石や砂を足でかきまぜて、流れてくる水生
   生物をタモ網で受け止める。


4 タモ網に入った水生生物をバケツに移す

  ・バケツの水は少なめが良い。


5 採集作業の繰り返し

  ・上記 1〜4の作業を何度か繰り返す


6 石や水生生物が集まったら

  ・石や水生生物が集まったら、採集は終了。


7 気温 ・水温の計測

  ・温度計で、気温と水温を計測し、記録しておく。
  ・計測中に踏まないように注意する


8 流速の計測

  ・簡易流速計で流速を下記の手順で調べる。
  ・片手にゴム球を持っておく。
  ・もう一方の手で、ゴム球 (またはペットボトル) から 3mの部分の
   ひもを握っておく。
  ・ストップウオッチの係の合図で、ゴム球を流し始める。
  ・ゴム球が流れて、3mのひもがぴんと張った時点でストップウオッチを
   止める。この秒数を記録しておく。


9 流速の計算

  ・3m = 300cm。 300÷秒数 = 流速 となる。単位は、cm/秒。







水生生物の調査方法
分類作業の手順







1
 分類作業

  ・バケツから白いバットに移し換える。
  ・バットに移し換えた後、ピンセット ・スポイドなどを使って、水生生物
   だけをさらに別の容器に取り分ける。
  ・水生生物は、種類ごとに容器を分けておく。






石の表面にくっついているトビケラ
(砂粒で巣を作っている)




2 石の表面にくっついている水生生物

  ・石の表面にくっついている水生生物は、歯ブラシやピンセットで
   はがして取る


3 種類を調べる

  ・取り分けた水生生物の種類を図鑑や資料を使って調べる。
  ・参考資料 : 水生生物の分類のポイント  水生生物アルバム








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