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  − 解説書 「写真撮影によるアユの簡易的鱗数調査方法」 −     

 友釣りは、おとりアユを用い、縄張りを持つアユの他個体への攻撃性を利用して釣獲する漁法です。アユの資源増殖として幅広く行われている手法のひとつである稚魚放流では、友釣りの特殊性から、種苗性(性質、由来等)が、遊漁者、漁業者、行政、試験研究機関などの多くの関係者に注目され続けています。

 アユの放流種苗は、大きくは、ふ化・餌付け・養成を養殖場ですべて行った「人工種苗」、琵琶湖で採捕された天然種苗である「琵琶湖産」、海域で採捕された天然種苗である「海産」に区分され、さらに、「琵琶湖産」は「仕立て」や「遡上」など、「人工種苗」も両側回遊性のアユを由来とした「海産系」、琵琶湖産のアユを由来とした「湖産系」に細分化されています。その種苗性は、研究者のみならず、釣り人の間などにおいても議論されてきましたが、実際に釣獲されたアユがどのような種苗であるか、根拠を伴った論説は一部に過ぎないのが現状です。

 岐阜県水産研究所では、種苗の由来を推測する手段の一つとして、由来ごとに異なることが報告されている鱗数について、背鰭第5軟条下における側線上方横列鱗数の計数方法のマニュアル化を行い、「アユの側線上方横列鱗数の計数マニュアルVer.1」として公表しました。しかし、この手法は、乾燥や絵具塗布の工程があるなど、サンプルに用いる魚体の計数後の食用がためらわれることや、実体顕微鏡等の機器の使用など、遊漁者等が個人で実施するのには敷居の高い手法でもありました。

 そこで、アユをそのままスマートフォンで写真撮影し、別途パソコン上で鱗数を数える手法を検討し、より簡易的な計数方法としてマニュアルを作成しました。



 計数のルールは、「アユの側線上方横列鱗数の計数マニュアルVer.1」で示された方法と同じ、背びれ第5軟条の基部を起点として斜め下方向に数えていく方法を用いています。計数は魚体を撮影した写真から行いますので、撮影時に多少の注意点があるほかは、サンプル自体への前処理を不要としています。マニュアルでは、魚体の撮影から写真を用いた計数方法の紹介に加え、計数の実践例も記しています。






 アユの種苗は、同じ名称(人工種苗、琵琶湖産種苗、遡上魚など)であっても、生産者や遡上の時期、地域などによってそれぞれ鱗数が異なってきます。本マニュアルや前バージョン(Ver.1)のマニュアルに従って計数した結果を、種苗の由来判別に利用する場合は、そこに放流された種苗や遡上してきた稚魚の鱗の計数データと照らし合わせて判断します。放流種苗や遡上魚の鱗数が重複する場合などでは、下顎感覚孔の配置などの情報も併せて用いる必要があることに留意してください。



鱗数のみでは区別が難しい例
(放流種苗、遡上稚魚が16〜19枚の区間で重複している)


解説書 「アユの側線上方横列
鱗数の計数マニュアル2.0」

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※ 両面印刷して左とじにすると冊子に
  なります




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