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  − 側線上方横列鱗数による人工種苗アユと天然アユの判別 −     

 天然アユ(自然再生産に由来し、海から遡上したアユ)が生息する河川では、放流した人工種苗アユの効果を把握するのは容易ではありません。何故なら、効果を把握するためには、漁獲されたアユが天然なのか放流なのか、客観的な手法で判別しなければならないからです。

 従来から天然アユと人工種苗アユでは鱗の数が異なることが知られており、背びれの基部から側線までの鱗の枚数「側線上方横列鱗数(そくせんじょうほうおうれつりんすう)」を計数することで両者を判別できることが報告されています。しかし、報告によって起点となる背鰭の鰭条が異なるなど、側線上方横列鱗数の計数方法は一様ではなく、同じサンプルを用いても計数者によって値がばらつくなど、単純にデータを比較することができないという問題がありました。

 そこで、当研究所では、計数上のルールを定め、誰でも、簡単に、高い精度で計数できるようなサンプル処理方法を検討し、側線上方横列鱗数の計数マニュアルを作成しました。


 計数上のルールとしては、背びれ第 5 軟条の基部を起点として斜め下方向に計数するという方法を採用しました。また、サンプルの解凍、粘液の除去、体表の乾燥、塗料の塗布という前処理を経て、実体顕微鏡下での計数となりますが、サンプルのサイズによって最適な前処理が異なることが分かりましたので、このマニュアルでは、サンプルのサイズに応じた処理方法を紹介しています。また、同マニュアルでは、計数サンプルの画像記録についても紹介しています。



天然アユの一例 : 鱗数 20 枚
(鱗が小さめで、数が多い)


人工種苗アユの一例 : 鱗数 16 枚
(鱗が大きめで、数が少ない)

 なお、このマニュアルに従って側線上方横列鱗数を計測したところ、長良川に遡上した天然アユは18〜23枚、県内で最も多く放流されている人工種苗アユは13〜18枚であり、18枚で重複する部分はありますが、概ね両者を判別できることが明らかになりました。


解説書 「アユの側線上方横列
鱗数の計数マニュアル
Ver.1」

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※ 両面印刷して左とじにすると冊子に
  なります

※ この解説書は、岐阜県河川環境研究所
 (当時)が発行したものです



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