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< 7 月  9 月 >


2020 8 31 日 (月)
渓流魚の人工産卵場
 





 国内の渓流の多くは、防災や取水を目的とする河川工作物が多数設置されており、それに伴う河床材料組成の改変によって、渓流魚の産卵適地の減少が懸念されています。そうした背景から、野生個体の自然繁殖の促進する技術として 「人工産卵場の造成」 が各地で行われています (関連記事 : 2009 年 10 月 12 日、2018 年 10 月 22・25 日)。

 栃木県のイワナの事例では、人工産卵場における卵の生残率 (発眼率) は自然産卵場よりも高いことが確認されています。また、秋田県のヤマメおよび岐阜県のアマゴの事例では、人工産卵場における卵の発眼率は自然産卵場と遜色ないことが確認されており、人工産卵場の造成はヤマメ・アマゴにも適用可能であることが示唆されています。


参考文献

中村智幸.1999.人工産卵場におけるイワナの産卵と
  産着卵のふ化.日本水産学会誌,65: 434-440.
  < 外部リンク >

コ原哲也・佐藤正人・大原健一・辻 寛人・岸 大弼.
  2019.人工産卵場におけるヤマメおよびアマゴ
  卵の発眼率.水産技術,11: 91-96.
  < 外部リンク >








2020 8 28 日 (金)
チャイロカワモズク
 





 チャイロカワモズクは、カワモズク目カワモズク科の淡水紅藻の 1 種です。

 カワモズク科の紅藻は、国内では 20 以上の分類群 (種・品種・変種) が確認されていますが、いずれも減少が懸念されており、それらすべてが環境省レッドリストに掲載されています。チャイロカワモズクは、準絶滅危惧 (NT) に選定されています。

 岐阜県飛騨地方では、近年、下呂市小坂町の 1 河川でチャイロカワモズクが発見されました。その後、他の河川でも発見されていますが、いずれも限られた区間にしか生育していないようです。カワモズク科は、環境改変に弱いため、集水域を含めて生育河川を保全することが望まれます。


参考文献

岸 大弼.2018.岐阜県高山市の苔川における食用
  藻類“すのり”の過去の分布および利用.地域
  生活学研究,9: 1-15.  < 外部リンク >

岸 大弼・洲澤多美枝・袖垣一也.2020.岐阜県の
  小坂川支流における紅藻チャイロカワモズクの
  生育環境.藻類,68: 73-76.  < 外部リンク >














2020 8 27 日 (木)
傾斜可変実験水路
 





 傾斜可変実験水路は、底生魚の定位能力を観察するための教材です。プロトタイプの H18-FU 型が 2006 年に、小型化した H20- MN 型が 2008 年に下呂支所で製作されました。

 この装置は、水路部分に底生魚を乗せた後、水路の傾斜を徐々に大きくし、底面への定位能力を調べることが可能です。実験に使用する魚類はハゼ科魚類が最適であり、その吸盤状になっている腹鰭の機能を視覚化して解説することができます。下呂支所では、小学生向けの自然教育企画 「ヨシノボリの不思議を研究しよう」 でこれらの装置を活用しています (関連記事: 2019 年 5 月 12 日・9 月 28 日・10 月 4 日、2020 年 10 月 6 日)。


参考文献

岸 大弼.2007.底生魚の定位能力を観察する傾斜
  可変実験水路 (H18-FU 型) について.岐阜県
  河川環境研究所研究報告,52: 27-30.   < PDF >

岸 大弼.2009.底生魚の定位能力を観察する傾斜
  可変実験水路 (H20-MN 型) について.岐阜県
  河川環境研究所研究報告,54: 19-21.   < PDF >




H18-FU 型







H20-MN 型








2020 8 26 日 (水)
自立式の箱メガネ
 





 自立式の箱メガネ 「ぽち」 は、不用になった透明デスクマットで製作した調査道具です (関連記事: 2013 年 11 月 28 日)。

 下呂支所では、アマゴやイワナなどの産卵床の調査で市販の箱メガネを使用してきました。しかし、産卵床の発掘作業は両手で行う必要があるため、箱メガネの保持を別の職員に任せる必要があり、人手を要することが問題になっていました。この自立式の箱メガネ 「ぽち」 は、単純な構造ながらも水面で自立して保持できるため、省力化に貢献しています。

 平成 19 年に初めて製作した試作型 「ぽち19 号」 は、レンズ部分の底面を 30 × 30 cm、側壁の高さを 5 cm で設計しました。しかし、下呂支所の実験水路で行った試験では、流れが複雑な箇所では水没し、長時間保持できないことが判明しました (関連記事: 2013 年 11 月 28 日)。そのため、近年は、改良型の 「ぽち 20 号」 や 「ぽち 25 号」 を使用しています (関連記事: 2018 年 10 月 17 日、2019 年 12 月 23・24 日)。




ぽち 20 号





2020 8 25 日 (火)
川ぞいの林のやくわり
 





 イワナなど冷水性の魚類が生息する山奥の川 (渓流) は、川ぞいの林 「渓畔林 (けいはんりん)」 があり、真夏でも水温が低いという特徴があります。水温が低く保たれるのは、渓畔林が直射日光を遮って川に日かげを作っているためです。渓畔林は、冷水性の魚類の生息に不可欠な存在といえます。

 このプログラム 「川ぞいの林のやくわり」 では、当研究所が考案 ・製作した 「水温観察水路」 を用いて日なたと日かげで水温の上がりやすさを比較し、渓畔林の機能について解説しています (関連記事: 2010 年 8 月 1 日・9 月 10 日、2011 年 5 月 21 日、2013 年 7 月 30 日、2018 年 6 月 3 日)。




イワナ




水温観察水路
(左側: 日かげ、右側: 日なた)






2020 8 24 日 (月)
カワシンジュガイ
 





 カワシンジュガイは、イシガイ目カワシンジュガイ科の淡水二枚貝の1種です。

 カワシンジュガイは、北海道から中国地方にかけての限られた地点にしか生息しておらず、環境省レッドリストでは絶滅危惧 IB 類 (EN) に選定されています。近年、全国各地で生息状況の悪化が懸念されており、天然記念物に指定されている地域も少なくありません。岐阜県内では、郡上市や高山市の生息地が天然記念物に指定されています。

 カワシンジュガイは、県内外のいずれの生息地においても減少や絶滅のおそれがあるため、生息地の保全や生息状況のモニタリングに取り組むことが望まれます。


参考文献

岸 大弼・伊藤健吾・秋山吉寛・竹内 基・近藤高貴.
  2019.宿主に寄生中のカワシンジュガイ幼生が
  有する一時的な塩分耐性.Venus,77: 54-58.
  < 外部リンク >











2020 8 21 日 (金)
渓流釣りのルールを解説する教材・
プログラム 「魚つりのはなし」
 





 「魚つりのはなし」 は、下呂支所で製作した教材・プログラムです。この教材・プログラムは、渓流釣りのルール 「遊漁券を購入する、体長制限を守る、禁漁区で釣らない」 を紹介するとともに、魚の模型を使用した釣り体験を通じて、自然繁殖魚の持続的利用の重要性について解説しています (関連記事 : 1 月 24 日)。

 魚の模型の数・全長・性比は、実際の川の個体群の調査データに準拠しており、昨年 7 月にアマゴ版、今年 2 月にヤマメ版を下呂支所で製作しました。このほか、他の機関への技術協力に取り組んでおり、昨年 12 月には国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所 (現 水産技術研究所) でニッコウイワナ版が製作されています。




ヤマメ版










配布資料


 これらの教材・プログラムは、小学校での総合学習、漁協組合員や遊漁者向けの勉強会などで活用しています (関連記事: 2019 年 8 月 31 日、9 月 28・29 日、10 月 4・21・28 日; 2020 年 2 月 23 日、9 月 27 日、10 月 6 日)。


渓流釣りのルールを解説する教材・プログラム
  「魚つりのはなし」  < 紹介ページ >





2020 8 20 日 (木)
アナログプロジェクタ
 





 A3 型アナログプロジェクタ (17 インチ) は、2006 年に下呂支所で製作したスライド上映装置です (関連記事 : 2013 年 7 月 17 日、2014 年 6 月 18 日・11 月 22 日)。PC プロジェクタが使用できない屋外での生物教育企画で重用しています。

 アナログプロジェクタの本体は、塩ビ管で組んだ簡素な外見ではあるものの、直径 16 ・20 ・25mm の管を使い分けて計 31 個の部材で設計しています。装置の前面には、実際のアナログテレビ (17 インチ) の外枠を流用しました。内部には A3 サイズのスライドを連結した 「巻き物」 を装備しており、ハンドルを回すと次のスライドが表示される仕掛けになっています。手動ですが、巻き戻しも可能です。現在、企画の内容に応じて 9 種類の巻き物があり、必要に応じて新しい巻き物を製作しています (関連記事: 2017 年 9 月 19 日、2019 年 8 月 21 日)。




巻き物








2020 8 19 日 (水)
アマガエル
 





 先日、下呂支所の庁舎内にアマガエルが現れました。

 カエルは、ヘビ (関連記事 : 5 月 28 日、7 月 16 日) と違って職員に巻き付くおそれはないため、いつも大目に見ています。














2020 8 18 日 (火)
冷凍室の機器が故障
 





 下呂支所の冷凍室の機器が故障しました。

 この機器は岐阜県水産試験場の時代から使用しているもので、設置から 30 年近く経過しています。老朽化している上、連日の猛暑で過負荷がかかったようです。








2020 8 17 日 (月)
給餌試験
 





 下呂支所では、ニジマスを対象とし、農産物加工残渣を添加した給餌試験を行っています。

 この試験では、農産物加工残渣を添加した餌が食味や肥満度にどのような効果が出るのかを調べています。今年度は、エゴマ油の搾りかすとユズの皮を添加予定です。どのような効果があるのがわからないので、結果が待ち遠しいです。














2020 8 14 日 (金)
猛暑
 





 先月の大雨と打って変わって、今月は猛暑日が続いています。

 下呂支所では、飼育用水の水温が 25 度に達しており、アマゴやニジマスなど冷水性の魚の適温を超過しています。これほどの高水温が続くと魚病が発生しやすくなるので、飼育魚へのダメージが心配されます。








2020 8 13 日 (木)
井戸の水位が低下
 





 飛騨地方では、先月とは打って変わって雨が降っておらず、下呂支所に隣接する飛騨川 (益田川) の水量が減少しています。地下水の水位は川の水位と連動しているため、飛騨川が減水すると下呂支所の井戸の水位も低下してしまいます。

 下呂支所では、アマゴやニジマスなどの稚魚の飼育に井戸水が不可欠ですが、井戸からの取水を制限して飼育水槽への給水量を減らさざるをえません。水の入れ換わりが悪くなると病気が発生しやすくなるため、飼育用水の配分に苦労させられます。








2020 8 12 日 (水)
水路の補修
 





 下呂支所の敷地内の水路が老朽化により漏水しているため、補修を行いました。

 この水路は、岐阜県水産試験場の時代から使用しているもので、設置からすでに 50 年以上経過しています。今回の作業では、水中用モルタルを使用して漏水箇所をふさぎました。











2020 8 11 日 (火)
飼育池の掃除
 





 下呂支所で飼育池の掃除を行いました。

 魚を飼育している池では、残餌や排泄物の掃除が必要です。また、水源の飛騨川(益田川) の増水時に濁った水が流入すると飼育池の底に泥が堆積するので、その都度、掃除しなければなりません。使用していない池でも藻が生えたり落ち葉がたまったりするので、使用を再開する前に掃除するようにしています。








2020 8 10 日 (月)
コオロギ
 





 先日、下呂支所の庁舎内にコオロギの幼虫が現れました。

 コオロギは、ヘビ (関連記事 : 5 月 28 日、7 月 16 日) と違って職員に巻き付くおそれはないため、いつも大目に見ています。








2020 8 7 日 (金)
飼育魚の体サイズ測定
 





 下呂支所でニジマスの体サイズ測定を行いました。

 同じ魚種であっても系統によって成長速度に差が生じることがありますし、同じ系統であっても飼育方法によって差が生じることもあります。下呂支所では、飼育魚の体サイズ測定を目的に応じて随時行っています。

















2020 8 6 日 (木)
水温計のデータ回収
 





 下呂支所で水温計のデータ回収を行いました。

 下呂支所では、敷地内の井戸や水路など計 6 ヶ所で水温を計測しており、データ回収や電池交換を定期的に行っています。








2020 8 5 日 (水)
ゲジ
 





 下呂支所の庁舎内にゲジが現れました。

 ゲジは、ヒル (関連記事 : 6 月 30 日) と違って職員の血を吸うおそれはないため、いつも大目に見ています。








2020 8 4 日 (火)
ムカデ
 





 下呂支所の庁舎の事務室内にムカデが現れました。

 全長 5 cm 程度の小さい個体でしたが、臆することなく足元を歩きまわって職員を恐慌状態に陥れました。








2020 8 3 日 (月)
井戸水の殺菌灯の交換
 





 下呂支所で井戸水の殺菌灯の交換作業を行いました。

 下呂支所では、卵の管理や稚魚の飼育に井戸水を使用しています。ふ化仔魚や稚魚は特に病気に弱いため、飼育用水の殺菌が不可欠です。




















記 事


渓流魚の人工産卵場

チャイロカワモズク

傾斜可変実験水路

自立式の箱メガネ

川ぞいの
林のやくわり

カワシンジュガイ

渓流釣りのルールを
解説する教材・
プログラム
「魚つりのはなし」

アナログ
プロジェクタ

アマガエル

冷凍室の機器が故障

給餌試験

猛暑

井戸の水位が低下

水路の補修

飼育池の掃除

コオロギ

飼育魚の
体サイズ測定

水温計のデータ回収

ゲジ

ムカデ

井戸水の
殺菌灯の交換

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