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  − 木製構造物の設置による水路の環境改善 −     

 
 小川は、小さな水域ですが、さまざまな魚種が産卵や成長に利用する重要な場所です。しかし 現在、その多くは護床・護岸されて、「水路」 につくり変えられています。水路は、浅くて流れが速い上、砂礫が消失しており、魚類が暮らしにくい環境になってしまいました。

 そこで、当研究所では、水路での魚類の生息状況の改善を目的とし、木製構造物 (間伐材を使用) の設置を試行しました。この研究では、下呂支所の実験水路を使用して 2007 ・2008 年に調査を行い、物理環境 (水深 ・流速 ・砂礫) の変化を記録するとともに、木製構造物を設置した区間 (操作区) と設置しない区間 (対照区) で魚類の現存量や種数を比べました。




木製構造物の設置前
(浅くて流れが速かった)


木製構造物の設置後
(深くて流れの緩やかな場所ができた)


 今回、これらのデータの再解析を行った結果、砂礫の堆積効果は確認できませんでしたが、木製構造物の設置によって水深が増大する傾向や流速が緩和される傾向があらためて確認されました。また、魚類の現存量については明瞭な変化は認められなかったものの、種数は操作区が対照区を上回っており、木製構造物が設置された区間が選好されることが示唆されました。





 本研究で提示した木製構造物は、簡素な構造で効果は限定的であり、まだまだ改善の余地があります。ただし、土木車両や大型機械が不要であり、身近な材料を用いて低予算かつ短期間で実施できるという長所を持っています。また、原状復帰や移設が容易であるため、用水管理や農作業の状況変化に対応しやすく、相応の実用性を有するものと考えられます。

研究紹介パネル < PDF >

※ このパネルは、岐阜県河川環境研究所
  (当時)が作成したものです

参考文献

岸 大弼・原 徹・苅谷哲治・コ原哲也.2011.下呂支所敷地内の水路の魚類相.
  岐阜県河川環境研究所研究報告,56: 1-4. < PDF >

岸 大弼・原 徹・苅谷哲治・コ原哲也.2012.水路での木製構造物の設置による
  物理環境の改善と魚類に対する効果.応用生態工学,15: 81-89.
   < 外部リンク >




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